医院紹介

聞こえにくいというだけで、人の輪に入って行きにくい、話の内容がわからないので相槌だけ打っている、会話でもトンチンカンな返答をするので引っ込み思案になった、など生活にも支障を来す方がおられます。手術で良くなる病気もありますが、全ての難聴が手術で良くなるわけではありません。

例えば加齢による老人性難聴などは、手術で聞こえを良くすることはできません。そのような場合、補聴器は有効な手段になります。補聴器は、眼鏡屋さんでメガネを買うように、補聴器を買って装用すればすぐに聞こえる、というわけではありません。実際にそのようにして補聴器を購入した患者さんから、「思ったほど聞こえない」「雑音が多く、頭が痛くなる」など、値段が高い割に思ったほどの効果が得られなかったという声もよく耳にします。まず耳鼻科を受診し、手術で良くなる可能性があるならまず手術を、そうでないなら補聴器のことをよく理解している「認定補聴器技能者証」を有する信頼のおける補聴器販売店の紹介を受け、まず補聴器を借りてしばらく使用し、十分補聴器のことを理解した上で購入するのが良いでしょう。

①どれぐらい聞こえにくいと補聴器を使えばいいのですか?

補聴器を試してみようと思われる患者さんは、まず診察の上、どの程度聞こえるのかを聴力検査で調べます。聴力は、dB(デシベル)という単位ではかります。難聴の程度によって、表のような不自由があります。補聴器は、一般には中等度難聴以上の方に適応となりますが、もちろん難聴の程度だけで決めるわけではありません。日頃は家族とだけ会話し、外出時だけ使用する方に比べて、学生や会議の多い会社員、または商売をされている方などは、軽度難聴でも使用した方が良い時もあります。

難聴の程度 平均聴力レベル 聞き取りの不自由度
正常 25dB未満 普通の会話に支障ない。
軽度難聴 25〜50dB未満 声が小さいと聴き取れない。テレビの音を大きくする。
中等度難聴 50〜70dB未満 普通の会話が聴き取りにくい。車は近づいてきてから、はじめて気づく。
高度難聴 70〜90dB未満 耳元の大きな声でやっと聞こえる。
重度難聴 90dB以上 耳元の大きな声でも聴きづらい。日常音は、ほとんど聞き取れない。

②補聴器を使うと誰でも聞こえるようになりますか?

補聴器を使って非常に聞こえやすくなったという方もいれば、逆に「音は聞こえるけど、何を言っているのか分からない」という方もおられます。「聞こえる」ことと、言葉の内容を理解する「聴きとる」こととは、大きな違いがあります。多くの方は言葉を、「耳で」聞いている、と思っておられますが、実際は「脳で」聴いている、のです。つまり、言葉は雑音と一緒に耳に入ってきますが、脳の中で雑音の中から自分にとって必要な言葉だけを選び出して理解し、それで会話をしているのです。難聴の程度の強い方は、この会話の内容を理解する能力も落ちている傾向にあります。そのために補聴器をつけても、雑音のあるところでは言葉を聴き取れなかったり、早口の言葉がわかりにくかったりするのです。その意味では、難聴がとことん進んで聞こえが悪くなってから補聴器を使用するよりも、難聴の軽い段階で補聴器を使用しはじめた方が補聴器に慣れていきやすく、補聴器の効果も期待しやすいと言えるでしょう。

③補聴器には、どのような種類がありますか?

補聴器はいくつかの種類がありますが、大きく分けると3つの種類があります。それぞれ、長所・短所があり、ご自分にあった補聴器を使用するのが良いでしょう。

耳あな型

耳の穴に入れるタイプのもので、最も小さく目立ちにくいものです。小さいので、高齢の方では操作に少し慣れが必要な場合もあります。また、小さいので紛失に気をつけて下さい。耳の穴に直接入れているので、音の方向もわかりやすいです。非常に小さく、外からみてもほとんど補聴器を使っていることが分からないものもあります。

耳かけ型

耳にかけて使用し、操作が簡単で扱いやすいのが特徴です。最近では非常に小さくなり、目立ちにくいものもあります。ただ、汗が入りやすく、故障の原因になることもあります。

箱型

補聴器本体から、コードでイヤホンとつながっています。聞こえにくい時は、相手の口元に補聴器本体を近づければ聞こえやすくなります。普段はポケットに入れていることが多く、そのために衣ずれの音が聞こえたりします。横から来た音でもポケットの中の補聴器で音を聞くので、音の方向が分かりづらいことがあります。

補聴器には以上のように、いくつかの種類があり、文字通り聴こえを補うものですが、全ての人が補聴器で良く聞こえるようになるとは限りません。そのために、ご本人が使用することを希望されないと、期待したほど聞こえなかったり、雑音が多かったりした場合に、補聴器の使用をやめてしまう方もおられます。最も大事なことは、ご本人が聞こえの悪いことを理解し、ご本人が補聴器の使用を希望されることであって、さらに使用後も補聴器を継続して使用し、補聴器を定期的に調整しながら、補聴器に慣れていくことが必要です。実際に補聴器を使用することで、「引っ込み思案でなくなった」、「外へ出て行くのが楽しくなった」と表情まで明るくなる方も多くおられます。難聴でお困りの方は、まず耳鼻科に相談されることをお勧めします。

補聴器購入の前に補聴器試聴のお勧め

当院では、隔週の火曜日午前中に「認定補聴器技能者証」を有する補聴器専門店に補聴器の貸し出しをお願いしています。補聴器は決して安価なものではありません。買ったけど、思ったほど効果無く使わなくなった、という患者さんのお声もよく伺います。
 補聴器は実際に使用してみなければ、それが効果あるかどうかわからず、効果があることをご本人が確認し、納得してから購入することをお勧めします。
試聴をご希望の方は、まず受付にお問い合わせ下さい。